島森です。漫画や小説の感想が主です。TBもコメントもご自由にどうぞ。


by nm73tsrm
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他に誰も手をつけていないから自分がやるしかない

*[book]『蝶のゆくえ』 橋本治 集英社 ISBN:9784087747171 2004/11e0038376_1835258.jpg

母親の美加が18歳の時に産んだ子。
美加の再婚とともに新しい父親と暮らすが、親として未熟な二人に虐待され死亡。
ーー「ふらんだーすの犬」


「面倒くさくてうっかり踏み込むと大変なことになるけど、
他に誰も手をつけていないから自分がやるしかない」


橋本治は、自分の中にあるものを出すのではなく、
人に足りていないから、説明を求められているからと
顕在化していないうちに、それを察知して本にしている人。

有吉佐和子と話した拍子に「志が低い!」と言われ、
そんなことを言ってくれるオトナなんていない、と感激して泣いちゃうようなことがあった人。

2004年に、この本が出て、文学好きな人の間では、話題になりました。
(読んだ人は、1作目の「ふらんだーすの犬」を無視することは出来ない)
橋本治の技術の凄い所は、読んでいくうちに、自分も"主人公と同じことするしかない"という心情にもっていけるところ。
"虐待"と書いたり、話したりすれば、自分は外部に置けるのですが、
この作品を読んでいる時は、誰も、そこから自由に外へ出ることは難しくなる。

本当に、小説巧者といえる作家は少ないです。
他の作品なら、『鞦韆』『愛の矢車草』の様々な文体と、この上ない執拗なねちっこさを誇るエロ。
評論なら『恋愛論』、マンガ好きなら『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』。

枕草子、源氏物語や平氏物語、彼の名前を見る機会は色々あるでしょうが、
本当に、人の為に、底知れぬ思いやりを見せる方です。
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by nm73tsrm | 2007-01-15 18:55 | book