島森です。漫画や小説の感想が主です。TBもコメントもご自由にどうぞ。


by nm73tsrm
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子供が大人に望むこと=現在が未来に望むこと

*[book]『黒い兄弟〈下〉』リザ テツナー, Lisa Tetzner, 酒寄進一 あすなろ書房 ISBN:475152125X e0038376_14373611.jpg
「ぼくらは今日この日から、つねに血をわけた兄弟のように力を合わせ、命あるかぎり、苦楽をともにする」そう誓うんだ。

本当に価値を感じられる本を読んだ後は、しばらく他の本が読めなくなります。
非常に丁寧に作られたバランスのとれた美味しい料理を頂いた後に、いきなり安価なジャンクフードを平らげられなくなるのと同じに。

【後書きより抜粋】
この作品が書かれたのは1941年。スイスで出版されました。
作者のテツナーはナチスに抵抗し、ドイツから家も財産も失ってスイスに亡命した一人です。
そのとき、志を同じくする友人らの友情がなかったら、明日の生活にも事欠く状況だったそうです。友情に支えられ、勇気と信念をもって続けた亡命生活、その約8年に渡る苦しい体験から生まれたのが、『黒い兄弟』なのです。
勇気と友情を讃える波瀾万丈のこの物語に、生半可なヒューマニズムなど通用しない線の太さが感じられるのはそのせいでしょうか?


この本が、フィクションでナチスの非道を書いた作品なら、この日まで日本で読まれることはなかったかもしれません。
ナチスの話は全く出てきません。男の子達が、煙突掃除に雇われ、どのように友人達と知恵を持って行動していくか、です。

この本の中では、少年達に手を差し伸べる人は、たった一人しか居ません。
しかし、その一人が、子供が大人に憧れるであろう資質を全て兼ね備えているのです。
(自分も、子供の頃、こういう大人に心底憧れたことを覚えているので)

ある経験の後に、それを如何に後世に訴えるか。
経験を特異なものとして表現してしまうと、共感者はその特異性故に減少していきます。
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by nm73tsrm | 2007-01-12 13:49 | book